• トップページ
  • プロジェクト1 駐日韓国大使館韓国文化院新築工事を振り返る

プロジェクト1

駐日韓国大使館韓国文化院
新築工事を振り返る

橋本店 建築部 理事
後藤未知郎

全てにおいて高難易度の施工への挑戦

主に宮城県を拠点とする橋本店にとって、東京都新宿区四谷の駐日韓国大使館韓国文化院建築工事は、まさに異彩を放つプロジェクトの一つと記憶しています。「駐日韓国大使館韓国文化院(以下、韓国文化院)」は、韓国の文化を日本に伝える基幹的施設として2009年4月に完成しました。

私たちがこの施工を請け負うきっかけとなったのは、2006年受注の駐仙台韓国総領事館の新築工事の実績を評価いただいたことでしたが、この韓国文化院の新築は、当時の私たちでは未経験の難易度の高い工程が多く、様々な面でハードルの高さを実感しながら、日々挑戦し続けるという難工事でした。

POINT

韓国の伝統的民族舞踊「僧舞(スンム)」をイメージしたデザイン

POINT

曲線が特徴的な正面外壁のカーテンウォール

異文化への理解、首都での建築の難しさを実感

韓国文化院新築工事は、韓国のサムスン物産(株)が元請けで、橋本店は建築工事一式を請け負いました。

工事において、まず目を見張ったのは正面外壁のガラスカーテンウォールで、これは韓国の伝統舞踊「僧舞(スンム)」をイメージしたデザインとされ、波打つような三次元の形状が特徴でした。

また、高層棟はS造、中層階はSRC、機械式駐車場を設置する地下はRCという様々な工法が用いられていたばかりでなく、中間免震構造であること、3階には防音対策を備える浮き構造の多目的ホール、4階屋上には韓国式庭園など、日本国内では例を見ない特殊な構造でした。また、現場環境においても新宿通りに面し、交通量や人通りも多く、防音・交通対策をはじめ、東京都における法規制に則った細微な対応を求められました。

そのほか、重要課題の一つだったのが、発注者、施工者、協力会社が韓国と日本に及ぶことから互いの文化を理解し、作業を進めることが不可欠でした。言葉の壁は、韓国文化院の職員の方々にもお手伝いをいただきながら、十分な時間を割いて意思疎通を図る必要があり、縁のない東京の現場であったことから作業をお願いする協力会社や資材の発注先などの選定などにも苦労しました。

POINT

韓国伝統の生活空間(サランバン)を忠実に復元造成したハヌル庭園

POINT

固定席307席(車椅子席4席含む)を備えたハンマダンホール

POINT

鉛プラグ入り積層ゴムをはじめ、3種類の免震装置を設置している。

社員一丸となって、がむしゃらに冷静に、前へ

このように韓国文化院建築工事は、当時の私たちにとって乗り越えなければならないことが山積で、社員の中には「こんなハードルの高い仕事は引き受けられない」と言う意見も聞かれました。

しかしながら、特殊な工事については専門技術者の指導を仰ぎながら、社員一丸となってがむしゃらに臨み、一歩一歩、誠意と冷静さを持って対応することでなんとか完遂することができました。

これも、施主の韓国調達庁をはじめ、設計・監理・施工を務められた企業の関係者、工事に尽力いただいた技術者、四谷の町内会など、様々な方々のご理解とご協力をいただいたからこそ成し遂げられたと現在も感謝の思いが絶えません。

大手ゼネコンならば難なくこなせた案件だったのかもしれませんが、韓国文化院の完成は、私たちにとって、佐々木社長の「難しいことへのチャレンジこそ、社員にとっては大きな自信や誇りになる」という思いが結実した瞬間でした。

施工途中には、橋本店の社員全員が現場見学に訪れ、それぞれが「地方の建設会社でも、こんな大事業に取り組むことができるんだ」と仕事への思いを新たにしたと思います。私としては、しばらくぶりに会う見慣れた顔に張り詰めていた気持ちが和んだことを思い出します。

落成式では秋篠宮ご夫妻をはじめ、韓国、日本の政府関係者が多数出席される中、佐々木社長が感謝状を受け取った瞬間に、橋本店が難航工事に挑み、無事に責務を果たせたことに安堵し、落涙しました。


橋本店 建築部 理事 後藤未知郎

後世に「橋本店」の名前を伝えられるような仕事を目指す

現在、橋本店では、韓国文化院のような海外企業とのJVという事例はほとんどありませんが、今後もこのような機会があれば、社員には是非ともチャレンジしてもらいたいと思います。シンボルマークの「空飛ぶクジラ」のように、限りない夢や目標を持って、技術を磨いてもらい、橋本店の名前を後世に伝えられるような仕事を目指してほしいと思います。

駐日韓国大使館 韓国文化院 概要

発注者 駐日韓国大使館/韓国調達庁
施工者 サムスン物産
建築工事一式 橋本店
設計・監理 三友綜合建築士事務所(韓国)
日本設計(日本)設計共同企業体
構造規模 鉄骨鉄筋コンクリート造(地下1階、地上8階)
建築面積 1,589m2
延床面積 8,749m2
完成日 2009(平成21)年4月
所在地 東京都新宿区四谷